町内でエネルギーやお金が循環する仕組みを目指して

福島県矢祭町

オスカー バルテンシュタイン

オスカー バルテンシュタイン

40年ほど前にドイツから来日。 人工知能と機械工学を専攻、アクアラインや橋の作成に従事していたが、あるとき自分の信念と違う仕事をしていたため本当に日本の人のために必要なことは何かを考え、エコライフラボを設立した。 現在は、バイオマスエネルギーについての講演などを行う傍ら、矢祭町にバイオマス発電所を作成して活動している。

一どんな活動をされていますか?

私は今、福島県にある矢祭町の小学校跡地で再生可能エネルギーを利用した発電事業と再生可能エネルギー発電の促進事業をしています。私が実際に行っている、再生可能エネルギーを利用した発電事業としては、木質バイオマスを利用したバイオマス発電とソーラーパネルを利用した太陽光発電を行っております。校庭に置いてあった、乾燥切削チップを集めるフォークリフトはこの学校の壁面に貼られているソーラーパネルだけで動かしています。

木質バイオマスを使ったバイオマス発電は、木質バイオマスという乾燥切削チップを燃焼させてガス化し発電させております。木質バイオマスを使った発電方法を選んだ理由は、燃料(乾燥切削チップ) にする森林資源が日本には豊富にあるためです。木質バイオマス発電で使用している発電装置は横10m×高さ2m強×奥行2mほどの小型サイズですが、これ1台で約50世帯ほどの電力を賄うことが出来ます。

一今やっていることについての課題はなんですか?

発電事業や発電の促進事業を進めていくうえで現在、困っていることはとくにありません。強いて言うのであれば、日本国民が当たり前のように、大手会社から供給されるエネルギーに依存して生活しまっていることが挙げられます。現在の日本では、ほぼすべての一般市民が化石燃料に頼る生活となっており、電力会社やガス会社から電気・ガスを購入する生活が当たり前となっています。

しかし、日本の豊富な森林資源と木質バイオマス発電があれば熱と電気を生産することができ、現在と変わらない生活を送ることができるのではないかと思います。

そのため、課題としてはこのような情報をもっと発信して、化石燃料に頼る必要なく生活していくことが出来ることをもっと多くの人に認知してもらえればと考えております。
例えば、外にあったフォークリフトも電気で動いていると見学に来た方々に話すと驚かれますが、電気で動くフォークリフトは前から存在しております。ただ、認知されていないだけです。それと同じように皆さんにエネルギーについて考えて知ってもらえればと考えております。

一課題を乗り越えたらどんな可能性がありますか?/ITを使ってできそうなことはなんですか?

課題と言うわけではありませんが、もっと多くの人に再生可能エネルギーのことを知ってもらうことで、今ある環境は当たり前ではないと認識してもらい、エネルギーのことに興味をもってもらえれば良い方向に進むのではと考えます。そのために、ITの力を使って何かをできるとしたら、木質バイオマス発電を多くの人に知ってもらうために多くの情報を発信していくことかと思います。

例えば、SNSなどで再生可能エネルギーについて発信してもらうことで多くの人に知ってもらい興味をもってもらうことが大切だと考えています。認知されることによって、当たり前に消費しているエネルギーのあり方についてもっと考える機会が増えれば、エネルギーのあり方や消費の仕方の考え方が、自然に変わっていくと思います。

その結果、地域内でエネルギーの地産地消ができるようになり、地域内でエネルギーと経済が循環する仕組み作りができればと考えております。

一今後の目標はなんですか?

先ほどもお伝えした通り、エネルギーの地産地消ができるようになればと考えて思っております。日本ではあまり知られていないかと思いますが、ヨーロッパの方では地域内でエネルギーの循環ができている地域があります。その地域と同じように日本にたくさんある森林資源を活用し、木質バイオマス発電を取り入れることで、地域内でのエネルギーの循環ができるのではないかと考えます。

例えば、矢祭町民は年間およそ数億円の規模の電気代と燃料代を電力会社・ガス会社に支払っています。これを、木質バイオマス熱電併給機を導入し町民で消費する循環システムを構築することで、電気代などにかかっていた費用を乾燥切削チップ代や木質バイオマス熱電併給機の点検等の作業員の人件費に充てることができ、お金も町内で循環できるようになります。

また、乾燥切削チップの生成や、木質バイオマス熱電併給機の点検する人も必要になり町の雇用や産業も増えると考えており、自立・循環型ができるようなまちづくりになればと思って活動しております。

編集後記

インタビューを通して、バルテンシュタインさんの真剣さを随所で感じました。
一貫して町内で経済やエネルギーを循環するシステムの重要性について説明する目からは真剣さが途切れず、私たちも当然と思って利用していた電気やガスを購入する仕組みが本当に正しいのか考えさせられました。
より多くの人に木質バイオマス発電を知ってもらうことがバルテンシュタインさんの目標に近づくことだと思いますのでこのインタビューがその一助となることを願います。

-コーディネーター紹介-

ID 福島県矢祭町

うちむら けいすけ

内村 圭佑

2015年11月にAKKODiSコンサルティング (旧VSN)に未経験のエンジニアとして入社し、NWエンジニアとして従事。
地域活性化については興味があり、自身の地元のイベントには積極的に参加している。今後を考え様々な地域の方との交流や今後必要となる知識・情報を取得するためにこのSIPプログラムに参画した。