帰ってきたくなる絆の町をこれからも

北海道当別町

うちうみ たろう

内海 太郎

お食事処と宴会場を併設した飲食店の3代目社長。近時は不動産仲介業も行っている。 家族と友人、従業員や商工会メンバーなど様々な人との繋がりを大事にする温厚な一面を持ちながら、自身の意見を主張する芯の強い一面もある。

一どんな活動をされていますか?

祖父母が創業した飲食店を継ぎました。私が3代目です。この飲食業に加えて、かつて東京で不動産業に携わっていた時の経験を活かし、数年前から不動産仲介業も始めました。

公職的なものとしては、「当別町商工会」の理事を務めており、現在はサービス・観光部会長と総務委員長という役職を与えられております。商工会の部会は全部で4つあるのですが、商工会員約300企業のうちの半数ほどがサービス・観光部会に所属しており、大所帯となっています。

また、商工会とは別組織ですが、町内の飲食店が加盟する「料飲店組合」という団体の組合長も務めております。当別を離れ東京で働いている間も「いずれは地元に戻るだろう」という思いが何となく頭の片隅にありました。ただ、ストレートに「どうして地元に戻ったのか」と問われると、きちんと回答することができませんね(笑)。

一今やっていることについての課題はなんですか?

普段「課題」として意識していることは特段ありません。あわただしく仕事をこなす日々を繰り返しているという感じです。

弊社に関しては、コロナの影響がやはり大きかったですね。「倒産するかも知れない」と真剣に考えました。現在は「コロナ禍」から抜け出したという認識が広がりつつありますが、この間に受けた経済的ダメージは取り返しがつかないほど大きいです。将来的に倒産は免れたとしても、これからの人生が借金の返済だけで終わってしまうのではないかという虚しさがあり、本当の意味でコロナと戦うのはこれからだと思っています。

地元に目を向けると、若者が町から出て行ってしまうため、若手の人材不足は深刻な状況だと思います。弊社の従業員さんも20代以下はおりません。 そうは言いながら私自身も東京に出て行ったように、若い人には町の外に出て広い視野をもってもらうことは大事だと思います。その経験を積み重ねたうえで、「地元に戻りたい」と思う若者がいればありがたいですね。そう考えると、私たちの「課題」は、そんな若者を迎え入れる環境を作ることなのだと思います。

一例をあげると、夏場は町内でさまざまなイベントが開かれますが、その企画準備や実働部隊というのは、いつも若手を中心とした同じようなメンバーで構成されます。私自身も商工会青年部や青年会議所に所属していた際には、普段の仕事をこなしながらそのような活動を行うため、他に自分がやりたいことがあっても、それに費やす時間もパワーも残っていませんでした。その反省から、若者が本当にやりたい事を自発的に行える時間と環境を与えることこそが、私たち世代の役割であると感じています。

一課題を乗り越えたらどんな可能性がありますか?/ITを使ってできそうなことはなんですか?

先ほどお話したような若者が自発的に活動を行える環境を作ることができれば、若者は勝手に「いいこと」をやってくれると思います。都会だろうと田舎だろうと、積極的に新しいことに挑戦できる環境がある町は魅力的なはずです。そうなれば、この町で育った子供たちが大人になり町の外へ出たとしても、「迷いながらいつか帰る愛の故郷=当別町」という循環が生まれるのではないかと考えています。

大切なのは「今住んでいる人がこの町をどう思っているか」ということだと思います。今住んでいる人が「良い町である」と感じることのできる町なのであれば、無理に外から人を呼び込もうしなくても自然に人は集まるはずです。
ITの導入でどんなことができるかは未知数だと思います。どのようなことができるのか、AKKODiSさんの知見をお借りして探していきたいですね。

先ほどの話に関連させると、導入そのものの障壁があると感じています。結局のところ、世代交代を進ませなければIT導入も進まないのかなと感じています。その意味では私自身もすでに薹が立った世代だと思うので、早めに若い世代に引き継いでいく役割を担っていると意識しています。

一今後の目標はなんですか?

会社の業績向上と自分自身の人生をやりたいように生きるということが目標です。

経営者として、従業員さんの生活の安定と向上を図ることが第一の目標です。先ほどもお話したように、残りの人生が会社の借金を返済するだけのものになるのは耐えられません。一刻も早く会社の業績を向上させること、そのために社業に専念することを徹底したいと考えています。

それと同時に自分自身が人生を楽しむということを意識しています。他人様からとやかく言われようと、自分のやりたい事をやるつもりです。この「自分のやりたい事をやる」ということ自体が、田舎のしがらみがある中では大変難しいのです。まずは私自身が自発的に活動できる環境を作るべきかも知れませんね。

編集後記

取材開始すぐにまず、「コンサルティング」という言葉に対して抵抗感を抱いていることを打ち明けてくださりました。SIPという活動の趣旨を丁寧に説明することで、これまでのコンサルとは違うということを感じ取っていただけたようでしたので、こちらも一安心しました。
また、お話を伺っていく中でご友人との思い出をお話しされている際には目頭を熱くする瞬間もあり、言葉として明言はされていなかったですが、地元への愛を感じました。
町のため様々な角度から考えられていましたので、こちらも持てる知識や技術を存分に活用してITの導入による可能性を感じてもらいたいです。

-コーディネーター紹介-

ID 北海道当別町

たけなか かつひろ

竹中 雄大

神奈川県出身
2019年にAKKODiS(旧VSN)にIT未経験中途入社し、パブリッククラウド基盤の保守運用業務を4年従事。
現在はプライベートクラウドのPM業に従事。ITを用いたDXへの興味と今後の自身の知見や視野を広げるために本活動に参加。