日本のレトロゲームを後世に残したい。

大阪府阪南市

いしい ゆたか

石井 豊

高校時代からアルバイトに没頭していた。高層ビルの窓掃除などの危険な仕事に従事することが多かったが、一度国外を巡り、見聞を広めたいと仕事を辞め、1995年から1年間、あてもなく中東からヨーロッパの旅に出た。 トルコ共和国でアンティーク絨毯の修復作業に出会い、弟子入りして技術を学び、帰国後に絨毯の修復や販売を仕事にしていた時期もあった。 その後、フリーマーケットビジネスからレトロゲームの修復、販売などを経てNPO法人 日本レトロゲーム協会を立ち上げる。

一どんな活動をされていますか?

日本のゲーム文化は諸外国にその価値が認められてるのに、レトロゲームといわれる昭和に発売された初代ファミコンのゲームなどの博物館や研究機関などが無いことが問題だと感じ、後世にレトロゲームを伝える活動を行っております。

25年ほど前は粗大ごみを拾ってフリーマーケットで販売する人がたくさんいました。しかし、アンプ、ステレオや家電などは持っていく人は多いですが、ゲームを持ち帰る人はいませんでした。
将来的にレトロゲームとしてビジネスになると感じたことで、粗大ごみからファミコンを買い取る業態を作り、壊れていても買い取りをして、ゲーム機を修理してゲーム販売店に卸す事業を始めました。
良い状態でレトロゲームに触れてほしいと考え、修理には力を入れていました。レトロゲームの修理は種類にもよりますが、それほど難しい物ではないんですよ。

現在はレトロゲームの良さを後世に伝えるために、良い状態のレトロゲームを様々な世代に体験してもらう活動をしています。その時代を知っている方には懐かしいという思い、子供世代にはこんなに面白いゲームがあったと感じてもらうために、阪南市と連携してイベントを開催し、実機でレトロゲームの体験機会を提供しています。

一今やっていることについての課題はなんですか?

レトロゲーム本体は修理、リユースすることは問題ありませんが、ゲームソフトは著作権の問題があり、イベントなどを通じて体験することを一部を除いてメーカーが許可をしていません。

イベント開催に向け、各メーカーへソフト利用の許可申請を行いましたが、許可されないところがほとんどで、許可されても利用料が発生するなど、ゲームソフトメーカーとしては協力いただくことが難しいようです。

過去にはゲームをしながらお酒が飲める店として「ゲームバー」なども存在しましたが、著作権等の問題をクリアできずに廃業したケースもありました。企業として、収益を生むことを考えるのは当たり前だと思いますが、いずれはゲームメーカー、ソフトメーカーにも協力を得て、後世にレトロゲームを伝えていく活動に協力を得たいと思っています。

そのためにも現在所有している、約35,000本のソフト、ハードですが、可能な限り良い状態で後世へ残していきたいです。

一課題を乗り越えたらどんな可能性がありますか?/ITを使ってできそうなことはなんですか?

課題であるゲームソフトの著作権問題がクリアされたら、気軽にレトロゲームに触れる機会がもっと作れると思っています。そうなると、より様々な世代にレトロゲームを認知頂くことができると思います。

特に日本のゲーム文化の始まりである初代ファミコンの良さを伝えていければ、レトロゲームを後世に伝えるという目的は達成できる可能性があると思っています。

現にイベントでは、許可を得ているソフトで実際にゲームを展示すると、レトロゲームを知らない世代でも楽しんで頂くことができ、親子で参加した方も、世代を超えて一つのゲームに熱中していました。所有している多数のソフトを活用して、初代ファミコンに代表されるレトロゲームなどに触れる機会を提供していきたいです。

一今後の目標はなんですか?

レトロゲームの博物館、研究機関を立ち上げたいと思っています。但し、博物館、研究機関を立ち上げるには相当な資金が必要になります。また、博物館では、保管できる環境が必要で、湿度の管理も必要になるので運営経費が非常にかかる見込みです。

博物館はあまり収益を生まないため、運営経費を極力かけずに運営する仕組みが必要だと思っており、そのためには自治体(阪南市)や関連企業の協力も得て、博物館の運営ができればと思っています。

また、レトロゲームの研究機関も併設し、後世に伝える仕組みを考えていきたいです。他には施設を立ち上げることで、地域の就労支援にもつなげられる事ができれば良いと考えています。まずは大阪万博の共創チャレンジに応募したので、万博でイベントを開催できればと考えています。

編集後記

日本の古き良きものを後世に残すという発想に感銘を受けました。
私自身もファミコン世代ですが、当時は空前のヒット商品で同世代の方は誰もが遊んでいたゲームが、今やレトロゲームと言われ、後世に残すことさえ難しいというお話を伺い、時代の流れを感じました。
石井さん自身が非常に器用な方で、なんでも修理して古いものを使える状態にできることで、そのような発想が生まれるのだと感じました。
レトロゲームが次の世代(若者)や諸外国の方にも認知していただくことを切に願っております。

-コーディネーター紹介-

ID 大阪府阪南市

いしざか はじめ

石坂 肇

東京都新宿区 出身、在住
キャリアスタッフに入社後、アデコ株式会社(本社スイス)に買収され現在に至る
アデコでは国内最大手の通信事業者のアカウントセールスに従事している。
地域創生活動に関心があり、SIPに参加する機会を頂き、自身のライフビジョンにしていきたいと考えている。