一どんな活動をされていますか?
川西市の久代(くしろ)にあります、久成寺(くじょうじ)の副住職という傍ら、教育委員会の“子ども・若者未来会議”の市民委員として、現在は主に、「車いす介助を学ぶ会」というのを実施しており、地域の各小学校に車いすの使い方を教えています。
もともと職業柄、地域の人たちと会話したり、愚痴を聞いたりすることが多い立場で、その中で、「それって市に言えば解決してくれるんとちゃうかなぁ」と感じることがいくつかありました。また、ちょうどその時に、参画協働課の「参画と協働のまちづくり推進会議」の委員公募が実施されるというのを耳にして、妻からも「地域の人たちから聞いた話や意見、直接、市に言ってみたら?」とアドバイスを受け、応募したのがきっかけでした。
最初は市に対して要望を挙げる場や、言い方は悪いですが文句を言える場という感覚でいたんですが、いざ応募して参加してみると、「これからどういう街にしていくか」、「どうやったら市民がまちづくりに参加してくれるか」というのを検討する会で、地域などで活発に活動している、いわゆるスーパー市民のような人たちと出会いました。以降、地域ボランティアを中心に、自治会への入会や勧誘、既に退任しましたが、消防団への参加など、自分が川西市に対してできることを実施しています。
一今やっていることについての課題はなんですか?
何もかもが古いシステム(やり方や思想)のままで残ってしまっていて、現代の傾向にマッチしていないことが問題じゃないかなと思いますね。今の時代、共働きしている家庭も増えて生活様式も変わってきているので、僕ら世代の、特にお子さんを持っている家庭なんかは、平日の日中に自治会の活動をすることが難しい状況なので、まず参加できないですよね。
それから当事者意識。特に若い方は、おそらく自分にとってメリットが無いと動かない傾向にあると思います。実際自治会に入って何をしないといけないか、というのも明確に展開されていないので、「自治会=お金払うだけの団体」というイメージを持たれている印象ですね。
色々と変える手立てや方法はあると思うんですが、いざそれを発言、発信してしまうと結局自分がやらざるを負えない状況になると思うので、「言ったもん負け」みたいな風潮があるんでしょうね。
結果そういう状態が続いて、担い手不足という状況が発生しているのだと考えています。
一課題を乗り越えたらどんな可能性がありますか?/ITを使ってできそうなことはなんですか?
急激に何かを変えるというよりかは、今まで見えていなかったものが見えるようになったり、昔からの仕組みが変わって、その時代の波に追い付ければいいかなと思います。
例えば自治会のメリットでいうと、友達が増える、人と知り合えるというメリットがあります。実際、地域の祭りなどは自治会が仕切っていたりするのですが、昨今のコロナ禍の影響で開催できない状態が続いていました。でも、祭りを体験させてあげたい、ハロウィンを体験させてあげたいという親御さんが「場所を貸して下さい。」と声をかけてきたことがあり、うちのお寺の境内を提供して、親御さんたち主体で開催することができました。
「自治会に入れば」と言う訳ではないですが、こんな風に、祭りきっかけで自治会の存在が見えるようになったり、結果祭りが開催できて子供たちの輪が広がるというのは、いいことですね。
また、ITの観点からすると難しいことから始めず、簡単にできることから始めればいいかなと思います。今でも、かなり年季の入った回覧板が回ってきますが、正直あれも「LINEでええやん」って思いますし、買い物に行くことが難しい高齢者の方には、ネットスーパーを勧めたりしています。他にも、スマートフォンに嫌悪感を持ってらっしゃる高齢者の方がいらっしゃったのですが、結局、お孫さんや曾孫さんの写真が送られて、いつでも見れると分かれば、それからは楽しそうにスマートフォンを使っています。
ただITを活用するとなると、どうしても年代層によってできる幅はあるので、全世代を1つに集めて何かをするよりかは、年代ごとに集まって何かをした方が共感も得やすく、やりやすいかなと感じています。その為には高齢者同士、若い人同士が集まって話す会とかがもっとあった方がいいですね。特に若い人たちが集まれば、意見が飛び交って結構いいものができると思います。
一今後の目標はなんですか?
自治会などの既存組織が継続できるようにしたいです。その為にも、この川西市は人と人との繋がりが切れることのない、活発な地域になればいいですね。
自分自身も、僧侶という職業柄、お盆の時期になると棚経(たなぎょう)のために川西市全域をまわって訪問しますが、その中で、ご家族の方が遠方に住まれている場合は、「○○さん元気にしていましたよ」と電話でご家族に伝えるようにしていますし、今お寺でも月4回くらい集まりがあって、よく高齢者の方とお茶飲んで会話したりしています。高齢者の方って、喋る機会を与えると、杖や上着を忘れて帰るくらい永久に喋られるんですよ。でもそれって、寂しいっていう思いがあったり、誰かと繋がっていたいと思われてるからなんですよね。
先程も言ったように、自治会というのは人と繋がれるメリットがあります。ぜひとも若い人達には、人との繋がりを介して、地域、市の関心を持ってくれるようになってほしいですね。
編集後記
川西市の北から南まで、本当に老若男女問わず、一番市民の声を多く聴いていて、実際に様々な活動もされている見守り隊の様な方。
また、やはりお坊さんという立場から、「人と人との繋がりの重要性を把握されている方」、「常に物事を俯瞰的に見ることに長けた方」だなという印象を受けました。
興味の無い人達に対して一歩踏み込める、現状から一歩退いて全体を客観的に見る、そこから
その人に合った最適な方法を一緒に考えて見つける、エンジニア、コンサルタントとしても見習うべき点が多かったです。